VRリハビリテーション医療機器導入の背景
この度、社会医療法人 頌徳会 日野病院リハビリテーション科では、仮想現実(VR)技術を活用した革新的なリハビリテーション医療機器「mediVRカグラ」を導入しました。本機器は、大阪大学との産学連携により開発され、2019年3月より医療機器として一般販売が開始された、エビデンスに基づく最先端のVRリハビリテーションシステムです(医療機器届出番号:27B2X00324201901)。
従来のリハビリテーション治療と比較し、mediVRカグラは「脳の再プログラミング」という独自の治療概念に基づき、神経可塑性を効率的に促進します。特に運動失調や半側空間無視では、リハビリテーション開始後、比較的早期に症状の改善が見られるケースも報告されています。
✓ 大阪府堺市の回復期リハビリテーション病院として、最新のVR技術を地域に提供
✓ 脳卒中後遺症、パーキンソン病、運動失調、認知機能障害など幅広い疾患に対応
✓ 座位で安全に実施できる革新的なトレーニング方法
mediVRカグラとは
VR技術を活用した医療機器
mediVRカグラは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着し、没入型の仮想空間でリハビリテーション訓練を行う医療機器です。患者さんは座位姿勢で、VR空間に表示される標的に対してリーチング動作を行います。この際、三次元空間において目標物の座標と自身の手の位置を正確に重ね合わせる「点推定」という認知処理と身体動作を同時に行うことが特徴です。
脳の再プログラミング:治療効果の科学的メカニズム
mediVRカグラの治療効果は、以下の神経科学的メカニズムに基づいています。
- フィードフォワード制御の強化:VR空間での正確な点推定動作により、患者さんは脳内で明確な運動イメージを生成する必要があります。これにより、運動実行前の予測的制御(フィードフォワード)が強力に活性化されます。
- 多感覚生体フィードバック:目標達成の瞬間に視覚・聴覚・触覚の複数感覚を同時に刺激することで、脳に運動の成功を強力に報知し、学習を促進します。
- 神経可塑性の促進:フィードフォワードとフィードバックのループを繰り返すことで、脳内運動モデルおよび認知モデルの再構築(再プログラミング)が効率的に進行します。
- 体性認知協調療法:身体感覚と認知機能を協調的にトレーニングすることで、姿勢制御システムの再編成を促します。
従来のリハビリテーションとの違い
従来のリハビリテーションでは実現が難しかった以下の要素を、mediVRカグラは実現しています:
高精度な点推定
三次元空間での正確な位置認知とリーチング動作により、深層筋(腹横筋など)を効率的に刺激し、体幹機能を向上させます。
高いアフォーダンス
ゲーム的な仕掛けにより、非言語的かつ直感的に動作を促すことができ、重度認知症や高次脳機能障害の患者さんにも効果的です。
認知負荷の精密調整
空間の広さ、目標物の大きさ・数、制限時間、背景情報の有無を調整することで、患者さんの認知年齢に応じた最適なトレーニングが可能です。
左右交互のトレーニング
健側の動きを参照しながら患側の動きを改善する独自のアプローチを採用しています。
適応疾患と期待される効果
mediVRカグラは、座位トレーニングで幅広い疾患・症状に対応可能です。以下に主な適応疾患と期待される効果を示します。
脳血管疾患(脳卒中)
- 片麻痺:上肢機能および歩行機能の改善。体幹機能の向上により近位から遠位への段階的な機能回復を促進。
- 運動失調:姿勢バランス制御系の脳内モデル再構築により、症状改善が期待されます。
- 半側空間無視:視空間認知障害に対する没入型VRの効果により、注意機能の改善が期待されます。
- 高次脳機能障害:注意機能、遂行機能、認知機能の総合的な改善。くも膜下出血後の重度注意障害改善例も報告されています。
神経変性疾患
- パーキンソン病:バランス能力と歩行機能の改善。多施設共同前向き研究(Hoehn & Yahr重症度分類Ⅳ以上)において、上肢機能および歩行機能の改善に極めて良好な治療効果が確認されています。
- 多系統萎縮症:姿勢制御の改善。
- 認知症:認知機能の維持・向上。アフォーダンスの高い設計により、重度認知症患者さんでも訓練が可能です。
整形外科疾患
- 股関節・膝関節疾患(術後):体幹機能強化による関節機能の改善。
- 脊髄梗塞・脊髄損傷:体幹機能の改善例が報告されています。
- 腰椎圧迫骨折・腰痛:リーチの高さ調整により部位特異的なアプローチが可能。
- 外反母趾:姿勢制御と足関節コントロールの改善。
その他の適応疾患
- 慢性疼痛・線維筋痛症:疼痛の改善効果が報告されています。
- 内耳機能障害(めまい症):バランス機能の改善。
- 廃用症候群・サルコペニア:高齢者の歩行および認知機能の改善。
- 脳性麻痺:小児患者での改善例が報告されています。
エビデンスに基づく治療効果
これらの効果は、複数の査読付き学術論文、症例報告、多施設共同研究によって裏付けられています。
科学的エビデンス:VRリハビリテーションの有効性
VRリハビリテーション、特にmediVRカグラの効果は、国内外の多数の研究によって実証されています。以下に主要なエビデンスをご紹介します。
パーキンソン病に対する効果
複数のメタアナリシスおよび系統的レビューにより、VRリハビリテーションがパーキンソン病患者のバランス能力と歩行機能を有意に改善することが示されています。
- Lei C et al. (2019)のメタアナリシス:VRリハビリテーションはパーキンソン病患者の歩行とバランスに有効であり、特にバランス機能において優れた効果を示しました(PLoS ONE)。
- Chen Y et al. (2020)のRCTメタアナリシス:VRはパーキンソン病患者のバランス改善に有効であり、運動学習、運動制御、認知モデリングの統合により効果が発現すると報告されています(Physical Therapy)。
- Feng H et al. (2019)の無作為化比較試験:12週間のVRリハビリテーションは従来の理学療法よりも歩行とバランスの改善において優れた結果を示しました(Medical Science Monitor)。
脳卒中に対する効果
脳卒中後遺症に対するVRリハビリテーションの効果も多数報告されています。
- Truijen S et al. (2022)の系統的レビュー:在宅VRトレーニングおよび遠隔リハビリテーションは、脳卒中患者のバランス改善に有効であることが示されました(Neurological Sciences)。
- 兵庫医科大学の研究(2022):慢性期脳卒中患者に対するmediVRカグラの使用により、バランス能力(Mini-BESTest)と上肢使用頻度・質(MAL)の改善が認められました。
運動失調と姿勢制御の改善
VRを用いたバランストレーニングは、通常のバランストレーニングよりも姿勢制御を効果的に改善することが実証されています。
- Prasertsakul et al.の研究:40~60歳の健常成人において、VRバランストレーニングは通常のバランストレーニングより姿勢制御を改善しました。
- 原正彦(2022)の報告:mediVRカグラは小脳梗塞後の上肢失調・体幹失調に対して、改善効果を示すことが報告されています(総合リハビリテーション)。
認知機能への効果
- くも膜下出血後の重度注意障害患者に対してmediVRカグラを使用した結果、注意機能指標および臨床症状の改善が認められました。
- mediVRカグラによる認知年齢推定(adjusted R²=0.897)により、患者さんの認知能力を客観的に評価し、適切な認知負荷でのトレーニング提供が可能になりました。
神経可塑性のメカニズム
VRリハビリテーションの効果は、以下の神経科学的メカニズムによって説明されます。
- 脳皮質の再編成:反復的な運動学習とフィードバックにより、大脳皮質の機能地図が再編成されます。
- 運動主体感の向上:自分が身体を動かしていると感じる運動主体感が運動能力向上に重要であり、没入型VRはこれを効果的に促進します(Matsumiya K, 2021)。
- 多感覚統合:視覚、深部感覚、前庭感覚を統合し、感覚運動ループを最適化することで神経可塑性が促進されます。
安全性の実績
現時点でmediVRカグラを用いて54,000回以上のリハビリテーションが施行されていますが、転倒イベントなどの安全性に関わる報告はなく、独自技術によりVR酔いが極めて生じにくい設計となっています。
頌徳会 日野病院の特長
当院では、mediVRカグラを最大限に活用するための体制を整えています。
mediVRカグラ認定セラピスト3名在籍
機器の特性を深く理解し、株式会社mediVRによる専門的な訓練を受けた認定セラピストが、課題設定から経過評価まで一貫して対応します。患者さんの状態に応じた最適なプログラムを提供します。
入院・外来リハビリともに対応
回復期リハビリテーション病棟での入院リハビリテーションはもちろん、外来リハビリテーションでもmediVRカグラをご利用いただけます。継続的なリハビリテーションにより、症状の持続的な改善を目指します。
自費リハビリテーションサービスを設定
保険診療のリハビリテーションに加えて、「上乗せリハビリテーション」として自費リハビリテーションをご利用いただけます。現在の保険リハビリテーションサービスを中止することなく、追加のトレーニング時間を確保できます。
アクセス良好
南海高野線「北野田」駅より送迎バス5分。駐車場60台以上完備しており、お車でのご来院も便利です。
リハビリテーションへの取り組み
当院は、患者さんの機能改善を目標とした丁寧なリハビリテーションを心がけています。mediVRカグラの導入により、新たなアプローチでの症状改善に取り組んでいます。
認定セラピストが患者さん一人ひとりの状態を詳細に観察し、動作の変化に適切に気づき、寄り添いながら治療を提供します。
ご利用案内
対象となる方
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血)後遺症による片麻痺、運動失調、高次脳機能障害のある方
- パーキンソン病、多系統萎縮症などの神経変性疾患の方
- 認知機能低下、認知症のある方
- 整形外科疾患術後の方(股関節・膝関節・脊髄疾患など)
- 慢性疼痛、線維筋痛症の方
- バランス障害、歩行障害のある方
- 廃用症候群、サルコペニアの高齢者の方
リハビリテーションの流れ
- 診察・評価:リハビリテーション科医師による診察と、理学療法士・作業療法士による評価を行います。
- プログラム設定:認定セラピストが患者さんの状態に応じた最適なVRプログラムを設定します。
- VRリハビリテーション実施:座位姿勢でヘッドマウントディスプレイを装着し、20~40分程度のトレーニングを行います。
- 経過評価:定期的に効果を評価し、プログラムを調整します。
料金について
| サービス区分 |
内容 |
料金 |
| 保険診療 |
入院リハビリテーション 外来リハビリテーション |
各種健康保険適用 (1割~3割負担) |
| 自費リハビリテーション |
上乗せリハビリテーション (保険リハビリテーションと併用可能) |
お問い合わせください ※目安:6,000円~/回 |
※自費リハビリは保険診療のリハビリテーションを中止せずに追加でご利用いただけます。
※料金は患者さんの状態や訓練時間により異なります。詳細はお問い合わせください。
副作用・注意事項
mediVRカグラは、独自技術によりVR酔いが極めて生じにくい設計となっています。また、座位で安全に実施できるため、転倒リスクも最小限に抑えられています。ただし、以下の場合はご利用いただけない、または慎重な対応が必要となることがあります。
- 重度の光感受性てんかんの既往がある方
- 重度の視覚障害がある方
- 座位保持が困難な方(医師の判断により実施の可否を決定します)
こんな症状でお悩みの方へ
以下のような症状でお困りの方は、ぜひVRリハビリテーションをご検討ください。
歩行のふらつき
バランス機能の低下、重心移動の不安定さ、歩行時の転倒不安
手の震え・巧緻性低下
パーキンソン病による振戦、上肢の協調運動障害、細かい作業の困難
姿勢の崩れ
体幹機能の低下、座位・立位バランスの不安定、姿勢保持困難
物忘れ・注意力低下
認知機能の低下、注意障害、遂行機能障害、半側空間無視
めまい・ふらつき
内耳機能障害、慢性めまい症、平衡感覚の障害
慢性的な痛み
線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群、神経因性疼痛
大阪府堺市で最新VRリハビリテーションをお探しなら
頌徳会 日野病院では、「VRカグラ」「mediVRカグラ」「VRリハビリテーション」を用いた最先端のリハビリテーションを提供しています。堺市東区、堺市全域、大阪狭山市、松原市など周辺地域からもアクセス良好です。
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引用文献
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原正彦. 仮想現実(VR)技術を用いたトレーニング. 総合リハビリテーション 2022; 50(4): 351-358.
https://www.medivr.jp/wordpress/wp-content/uploads/2022/04/...
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岩佐沙弥、道免和久. リハビリテーション医学におけるVR技術の応用. 日本リハビリテーション医学会誌 2022; 59(12): 1243-1245.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/59/12/59_59.1243/
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Lei C, Sunzi K, Dai F, et al. Effects of virtual reality rehabilitation training on gait and balance in patients with Parkinson's disease: a systematic review. PLoS ONE 2019; 14(11): e0224819.
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Chen Y, Gao Q, He CQ, Bian R. Effect of virtual reality on balance in individuals with Parkinson disease: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Physical Therapy 2020; 100(6): 933-945.
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Feng H, Li C, Liu J, et al. Virtual reality rehabilitation versus conventional physical therapy for improving balance and gait in Parkinson's disease patients: a randomized controlled trial. Medical Science Monitor 2019; 25: 4186-4192.
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Canning CG, Allen NE, Nackaerts E, et al. Virtual reality in research and rehabilitation of gait and balance in Parkinson disease. Nature Reviews Neurology 2020; 16(8): 409-425.
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Truijen S, Abdullahi A, Bijsterbosch D, et al. Effect of home-based virtual reality training and telerehabilitation on balance in individuals with Parkinson disease, multiple sclerosis, and stroke: a systematic review and meta-analysis. Neurological Sciences 2022; 43(5): 2995-3006.
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Wang B, Shen M, Wang Y, et al. Effect of virtual reality on balance and gait ability in patients with Parkinson's disease: a systematic review and meta-analysis. Clinical Rehabilitation 2019; 33(7): 1130-1138.
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Matsumiya K. Awareness of voluntary action, rather than body ownership, improves motor control. Scientific Reports 2021; 11: 418.